「害獣駆除には、どんな資格が必要なの?」
「自宅に箱わなを置くだけなら、免許なしでも問題ない?」
ハクビシンやアライグマが自宅へ入り込んだとき、自分で捕獲して早く追い出したいと考える方もいるでしょう。
しかし野生鳥獣は法律によって保護・管理されており、自宅の敷地内であっても自由に捕まえられるわけではありません。
狩猟免許を持っていても、捕獲する時期や目的によっては、自治体から別の許可を得なければならない場合があります。
この記事では、害獣駆除に関わる資格や狩猟免許の種類、取得手順、免許がなくても対応できる範囲を解説します。
ほとんどの害獣を無許可で捕獲できない理由
野生鳥獣を捕獲するには、狩猟のルールに沿って狩猟者登録をするか、被害防止などの目的で捕獲許可を受けるのが基本です。自宅へ入り込んだ動物だからといって、自由に箱わなを置けるとは限りません。
鳥獣保護管理法と外来生物法による規制
鳥獣保護管理法では、狩猟や捕獲許可などに基づく場合を除き、野生鳥獣の捕獲や殺傷を原則として禁止しています。規制の対象には、ハクビシン、イタチ、タヌキ、コウモリ、カラスなど、住宅や農地に被害を出す動物も含まれます。
アライグマやヌートリアなどの特定外来生物には外来生物法も関わり、生きたままの運搬や飼育、野外への放出などが規制されています。
捕獲した後に「遠くの山へ放せばよい」と考える方もいますが、動物の種類によっては放出そのものが法律違反になります。
無免許・無許可で捕獲した場合の罰則
鳥獣保護管理法に違反して野生鳥獣を捕獲すると、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金を科される場合があります。
特定外来生物を許可なく野外へ放した場合は、個人でも3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象です。
さらに、仕掛けたわなへ近隣のペットや対象外の動物がかかれば、治療費や損害賠償を請求されるおそれもあります。
法律に反した状態で起きた事故は、加入している個人賠償責任保険で補償されない可能性もあります。
害獣駆除に関わる狩猟免許の4つの種類
免許を取ればあらゆる猟具を扱えるわけではなく、捕獲方法に合った区分を選ばなければなりません。
| 免許の種類 | 使用できる主な猟具 | 取得できる年齢 |
|---|---|---|
| ①わな猟免許 | くくりわな・箱わな・箱落とし・囲いわな | 18歳以上 |
| ②網猟免許 | むそう網・はり網・つき網・なげ網 | 18歳以上 |
| ③第一種銃猟免許 | 散弾銃・ライフル銃・空気銃 | 20歳以上 |
| ④第二種銃猟免許 | 空気銃 | 20歳以上 |
①初心者が検討しやすい「わな猟免許」
住宅や農地の害獣対策を目的に狩猟免許を取るなら、まず候補になるのがわな猟免許です。くくりわなや箱わな、囲いわななどを扱う免許で、18歳以上であれば受験できます。
箱わなはアライグマやハクビシンなどの捕獲にも使われますが、対象動物や設置場所に応じた捕獲許可が別途必要になる場合があります。
わなの設置後は定期的に見回り、対象外の動物がかかったときに早く対応できる管理体制もしいておきましょう。
免許は猟具を安全に扱う知識の証明であり、好きな場所へ自由にわなを置ける許可証ではないと覚えておきましょう。
②鳥類の捕獲に使われる「網猟免許」
網猟免許は、むそう網、はり網、つき網、なげ網を使う狩猟に必要です。カモ類などの鳥類を対象とする場面で使われますが、網の種類や設置方法によっては使用が禁止されている場合があります。
住宅のベランダへ来るハトや、ゴミ置き場へ集まるカラスを捕まえたい場合も、網猟免許だけで自由に捕獲できるわけではありません。
被害防止を目的とした捕獲では、自治体の許可や捕獲数、実施期間などの条件が設けられます。
鳥の巣や卵を撤去する行為も規制対象になる場合があるため、繁殖期に巣を見つけたときは先に自治体へ相談してください。
③「第一種銃猟免許」と「第二種銃猟免許」
第一種銃猟免許では装薬銃と空気銃、第二種銃猟免許では空気銃を使った狩猟が認められます。
イノシシやシカなどの捕獲で使われますが、住宅街で害獣を見つけたからといって、その場で銃を使えるわけではありません。
銃を所持するには、狩猟免許とは別に、住所地を管轄する都道府県公安委員会から所持許可を受ける必要があります。
試験では銃の点検や分解、装填、射撃姿勢、安全な受け渡しなども確認されます。
銃猟は取得手続きも管理責任も重いため、住宅へ入り込んだ害獣を自分で駆除する目的だけで選ぶ免許ではありません。
免許や許可がなくても対応できるケース
害獣対策のすべてに狩猟免許が必要なわけではありません。法律の対象外となるいえねずみの駆除や、一定条件を満たす農林業者の囲いわななど、例外もあります。
ただし、適用条件を広く解釈しないよう注意が必要です。
資格不要で駆除できる「いえねずみ」3種
ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミの3種は鳥獣保護管理法の対象外であり、狩猟免許がなくても駆除できます。
自宅へ粘着シートや捕獲器、殺鼠剤を置く行為に、狩猟免許や捕獲許可は必要ありません。
ただし、天井裏で音がするだけでは、ネズミなのか、イタチやハクビシンの幼獣なのかを見分けられないことがあります。
誤認したまま捕獲器を設置すると、保護対象の動物を無許可で捕まえる結果になりかねません。
足跡や糞、鳴き声だけで特定できないときは、捕獲を始める前に専門業者へ調査を頼んでください。
農林業者が事業地内へ設置する「囲いわな」
農林業者が自分の事業地内で被害を防ぐ目的に限り、囲いわなを使う際に狩猟免許が不要となる特例があります。
ただし免許が不要でも、対象動物や地域によって捕獲許可などの手続きが必要です。
この特例は囲いわなを対象とするものであり、くくりわなや箱わなを自由に使える制度ではありません。
また、捕獲後の個体を生きたまま移動させたり、別の場所へ放したりできるとは限りません。
狩猟免許試験の内容と取得までの手順
狩猟免許試験は都道府県が実施しており、「知識試験」「適性試験」「技能試験」で構成されます。
日程や申請書類、手数料は受験する都道府県によって異なる場合があるため、住所地の案内を確認してください。
申請書類を準備して試験へ申し込む
狩猟免許を取りたい方は、まず住所地の都道府県が公表している試験日程と申請期間を確認しましょう。標準的な申請では、狩猟免許申請書、写真、医師の診断書などを提出し、1種類につき5,200円の手数料を納めます。
ただし、必要書類や納付方法は都道府県ごとに異なる場合があるため、古い案内を使わないようにしてください。
各地域の猟友会では、試験前に予備講習会を開いていることがあり、猟具の扱いや鳥獣判別を練習できます。
試験日だけでなく、申請締切と講習会の日程も確認し、1か月から2か月ほど余裕を持って準備しましょう!
知識・適性・技能の3試験を受ける
狩猟免許試験では、知識試験と技能試験で70%以上を取り、適性試験の基準も満たす必要があります。
知識試験は三者択一の30問で、法令、猟具、鳥獣の生態、保護管理などが問われます。
適性試験では視力や聴力、手足の運動能力を確認し、わな猟と網猟では両眼0.5以上の視力が基準です。
技能試験では16種類の鳥獣判別や、使用できる猟具と禁止猟具の判別、わなや網の組み立てなどをおこないます。
専門業者を選ぶ際に確認したい資格と認定
害獣駆除業者を選ぶ際は、「有資格者が在籍」と書かれているだけで決めず、資格名と作業内容の関係を確認しましょう。狩猟免許のほか、衛生管理や防除技術、組織の安全体制を示す認定もあります。
建物の衛生管理に関わる「防除作業監督者」
防除作業監督者は、建築物内のネズミや昆虫などを防除する作業を監督する知識を身につけた人です。
建築物衛生法に基づく講習を修了しており、薬剤の扱い、作業計画、衛生管理などを学んでいます。
主にネズミや昆虫の防除と関係が深いため、ハクビシンやアライグマの捕獲資格そのものではありません。
それでも、糞尿清掃や消毒、ダニ・ノミ対策まで頼む場合は、建物の衛生管理を理解しているかを確かめる目安になります。
公式サイトで資格名を確認したうえで、実際に担当するスタッフが資格を持っているかも聞いてください。
有害生物防除の知識を示す「ペストコントロール技術者」
ペストコントロール技術者は、日本ペストコントロール協会が認証する有害生物防除の資格です。
1級から3級までの区分があり、協会などが実施する養成講座や研修の修了者が認証申請できます。
なお、正式名称は「ペストコントロール技能士」ではなく「ペストコントロール技術者」です。
狩猟免許とは役割が異なりますが、害獣の生態や薬剤、安全な施工について学んだスタッフがいるかを比べる際に使えます。
資格の有無だけでなく、対象となる動物の施工実績や再発時の対応まであわせて確認しましょう。
安全管理体制を確認できる「認定鳥獣捕獲等事業者」
認定鳥獣捕獲等事業者とは、安全管理体制や捕獲従事者の技能・知識について、都道府県知事の認定を受けた法人です。個人が持つ狩猟免許とは異なり、事業者としての研修体制や安全管理などを審査する制度です。
環境省の検索ページでは、都道府県、捕獲方法、対象鳥獣から認定事業者を調べられます。
ただし、主に自治体が発注する個体数管理などで重視される認定であり、一般住宅の侵入口封鎖や清掃技術を直接保証するものではありません。
家屋の害獣対策では、認定の有無に加えて、住宅施工の経験、見積書の内訳、保証範囲も比べてください。
免許取得後も必要になる行政手続き
狩猟免許へ合格しただけでは、いつでもどこでも害獣を捕獲できません。通常の狩猟をする場合は狩猟者登録、生活被害を防ぐ目的で猟期外に捕獲する場合は捕獲許可などが関わります。
自治体へ「捕獲許可」を申請する
住宅被害を理由に野生鳥獣を捕獲する場合は、自治体などへ捕獲許可を申請するのが基本です。
申請先は動物や地域によって異なり、市区町村の環境課、農政課、都道府県の担当部署などが窓口になります。
申請時には、捕獲場所を示す図面、被害写真、捕獲方法、実施者、希望期間などを求められる場合があります。
また自治体によっては一定の小型箱わなに限り、狩猟免許を持たない住民を捕獲許可の対象とする運用もあるため、「免許がないから絶対に申請できない」とも限りません。
狩猟者登録と「猟期」のルールを守る
通常の狩猟をするには、狩猟免許とは別に、実際に狩猟する都道府県で狩猟者登録を受けます。 登録時には手数料や狩猟税のほか、損害賠償能力を示す保険や共済への加入証明などが求められます。
一般的な狩猟期間は北海道以外で11月15日から翌年2月15日までが基本ですが、動物や都道府県によって延長・短縮される場合があります。
有害鳥獣捕獲の許可を受けた場合は、通常の猟期ではなく、許可証に記載された期間や場所、方法に従います。
住所地以外の都道府県で狩猟する場合も活動先ごとの登録が必要なので、免許状だけを持って県境を越えて捕獲してはいけません。
自力での駆除と専門業者への依頼を比較
免許を取って自分で捕獲すれば安く済むようにみえますが、試験や申請、道具の準備、毎日の見回りまで含めると相応の時間がかかります。一度きりの住宅被害なら、業者へ頼むほうが早い場合もあります。
資格取得と道具の準備にも費用がかかる
自力駆除では、免許試験の手数料だけでなく、診断書や講習会、猟具、防護用品にも費用がかかります。
試験へ合格しても、捕獲許可や狩猟者登録が終わるまでは、すぐに活動できない場合があります。
農地で繰り返し被害が出ており、今後も継続して対策するなら免許取得を検討する意味はあるでしょう。
一方、自宅へ一度入り込んだ害獣への対応だけなら、取得に使う時間と費用を業者へ回したほうが早く終わることもあります。
感染対策と再発防止まで考える
害獣対策は個体を捕まえただけで終わらず、糞尿の清掃や消毒、侵入口の封鎖まで必要です。
屋根裏には糞や巣材、害獣に付着していたダニ・ノミが残っていることがあり、乾いた糞を掃除機で吸うと粉じんが舞います。
また、侵入口を見落とせば、同じ個体や別の害獣が再び入り込むかもしれません。
専門業者へ頼む際は、捕獲資格の有無だけでなく、清掃・消毒・侵入口封鎖・保証の範囲まで確認してください。
害獣の種類がわからない、高所作業がある、糞尿被害が広い場合は、自分で作業を始めずに調査から任せるほうが安全です。
害獣駆除の資格に関するよくある質問【Q&A】
Q:狩猟免許試験の合格率はどれくらいですか?
合格率は都道府県や試験年度、免許区分によって異なるため、一律には示せません。
知識試験と技能試験では70%以上の得点が必要で、適性試験もすべての基準を満たす必要があります。
法令や鳥獣判別は普段触れる機会が少なく、わなの組み立ても知識だけでは覚えにくい内容です。
未経験から受験する方は、猟友会などの予備講習会へ参加し、実際の猟具で練習しておきましょう。
Q:一度取った狩猟免許に有効期限はありますか?
狩猟免許の有効期間は、取得日から3年を経過した日の属する年の9月14日までです。
継続する場合は、有効期間が終わる前に更新手続きをおこない、適性検査と講習を受けます。
免許が失効したまま狩猟者登録を続けることはできません。
更新日程は都道府県が案内するため、免状に記載された期限を早めに確認してください。
Q:わな猟免許と網猟免許は18歳から取れますか?
はい、わな猟免許と網猟免許は18歳以上で受験できます。第一種銃猟免許と第二種銃猟免許は20歳以上が対象です。
ただし、年齢条件を満たしていても、一定の欠格事由に該当する場合は免許を受けられません。
申請時には医師の診断書なども必要になるため、受験する都道府県の募集案内を確認しましょう。
Q:適性試験の聴力基準はどのくらいですか?
聴力は、10mの距離で90デシベルの警音器の音を聞き取れることが基準です。 補聴器を使用した状態で検査を受けることも認められています。
日常会話が聞こえるかどうかだけで自己判断せず、聴力に不安がある場合は申請先へ相談してください。
適性試験では、聴力のほかに視力や手足の運動能力も確認されます。
Q:狩猟免許を持っていれば全国で捕獲できますか?
狩猟免許は都道府県知事が交付しますが、免許を持っているだけで全国どこでも活動できるわけではありません。
通常の狩猟をする場合は、狩猟する都道府県ごとに狩猟者登録をおこないます。
さらに鳥獣保護区や休猟区、銃猟禁止区域など、捕獲方法を制限される場所もあります。
有害鳥獣捕獲では、許可証に記載された区域、期間、動物、方法を守ってください。
まとめ~害獣駆除の資格と許可を確認して安全に対処しよう~
害獣駆除では、狩猟免許さえ取れば自由に捕獲できるわけではありません。
使用する猟具に合った免許に加え、通常の狩猟なら狩猟者登録、被害防止を目的とする捕獲なら自治体などの許可が関わります。
ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミは免許なしで駆除できますが、ほかの動物と見分けられない場合は先に調査を頼んでください。
無許可でわなを設置すると、刑事罰だけでなく、対象外の動物や近隣のペットを傷つける事故にも発展します。
繰り返し農作物被害へ対応するなら免許取得も検討できますが、自宅で起きた一度の害獣被害では、申請や道具の準備にかかる費用と時間も無視できません。
